米国特許商標庁(USPTO)は、2024年4月、USPTOに対する手続でAIを利用する場合の指針を公表しました。
この指針は2024年に公表されたものですが、2026年3月に更新されたUSPTOの公式サイトでも、現在のAI利用指針として掲載されています。
この指針は、AIの利用を禁止するものではありません。
AIを利用した場合にも、正確な書類を提出する義務、依頼者の情報を守る義務など、従来から存在する規則がそのまま適用されることを確認するものです。
AIが作成した書類は誰が確認するのか?
USPTOに提出する書類は、生成AIを利用して作成したものであっても、提出者本人が内容を確認しなければなりません。
生成AIは、事実を誤って記載したり、存在しない判例や文献を示したりすることがあります。
そのため、USPTOは、AIの回答が正しいと信用するだけでは十分な調査をしたことにならないとしています。
提出者は、少なくとも次のような事項を確認する必要があります。
- 記載された事実が正しいか
- 引用した判例や文献が実在するか
- 引用内容が原資料と一致しているか
- 法的な主張に根拠があるか
- 明細書や図面の技術的内容が正確か
- 必要な情報が抜けていないか
誤りや脱落が見つかった場合には、提出前に修正しなければなりません。
機密情報を入力してもよいのか?
USPTOの指針は、依頼者の機密情報を生成AIに入力することにも注意を求めています。
例えば、次のような情報です。
- 未公開の発明内容
- 出願前の明細書や請求項
- 拒絶理由への対応方針
- 依頼者との相談内容
- 営業秘密に関する技術情報
生成AIサービスによっては、入力された情報が保存され、AIの学習やサービス改善に利用される場合があります。また、サービス提供者や第三者に情報が開示される可能性もあります。
利用前には、利用規約、プライバシーポリシー、情報の保存方法、サーバーの所在地、サイバーセキュリティ対策などを確認する必要があります。
AIを使ったことは開示しなければならないのか?
USPTOの指針では、AIを利用したという理由だけで、その事実を常にUSPTOへ開示しなければならないとはされていません。
ただし、AIの利用が特許性などの判断に重要な意味を持つ場合には、開示義務の対象となる可能性があります。
特に、発明者として記載された人が、請求項に記載された発明へ実質的に貢献しているかどうかには注意が必要です。
日本の特許実務にも参考になるか?
この指針は、USPTOに対する手続について示されたものであり、日本の特許実務に直接適用されるものではありません。
しかし、
- AIの出力を人が確認する
- 最終的な責任は提出者が負う
- 機密情報を安易に入力しない
- AIサービスの情報管理方法を確認する
という考え方は、日本の特許業務で生成AIを利用する場合にも参考になります。
生成AIを業務に導入するときには、単に「AIを使ってよいか」を決めるだけでは足りません。
何を入力してよいか、誰が出力を確認するか、最終的な責任を誰が負うかまで決めておく必要があります。
指針の全文は、USPTOのAI利用指針で確認できます。
現在の掲載状況は、USPTOのAI関連資料一覧で確認できます。