米国特許では、同じクレームでも、一つの言葉をどう解釈するかによって侵害や無効の結論が変わることがあります。

このクレーム解釈について、現在も基本となっている重要判例が、2005年の Phillips v. AWH Corp. です。

何が争われたのか?

Phillipsの特許は、刑務所などで使用する耐破壊性の壁に関するものでした。

争点の一つは、クレームに記載された「baffles」という言葉をどのように解釈するかでした。

この言葉を広く解釈するのか、それとも明細書に記載された特定の構造に限定して解釈するのかによって、侵害の判断が変わる可能性がありました。

基本は「当業者がどう理解するか」

Federal Circuitは大法廷で、

クレームの言葉は、原則として、その技術分野の当業者が理解する通常かつ慣用的な意味で解釈する

という基本原則を確認しました。

ただし、辞書で一般的な意味を調べれば終わり、ということではありません。

クレームの言葉は、特許全体の文脈の中で理解する必要があります。

明細書が非常に重要

Phillips判決が特に重視したのが明細書です。

クレーム自身の記載に加えて、

明細書、審査経過などのIntrinsic Evidence(内部証拠)

を重視してクレームを解釈します。

特に明細書は、発明者がクレームの言葉をどのような意味で使用したのかを知るための極めて重要な資料です。

一方、辞書、専門書、専門家証言などのExtrinsic Evidence(外部証拠)も利用できますが、特許自身の記載より優先されるものではありません。

明細書の実施例をそのまま読み込むわけではない

ここは実務上重要です。

明細書を重視するといっても、

実施例に書かれている構造を、そのままクレームの限定として読み込んでよい

という意味ではありません。

クレームの文言と明細書を参照しながら、発明者がその言葉をどの範囲で使用しているのかを判断します。

日本から米国出願するときにも重要

Phillips判決から分かるのは、米国特許ではクレームだけでなく明細書の書き方が、将来のクレーム範囲に影響し得るということです。

例えば、明細書で特定の構造だけを繰り返し「本発明」と説明したり、ある用語を狭く定義したりすると、後のクレーム解釈に影響する可能性があります。

したがって米国出願では、

クレームを広く書くだけでなく、そのクレームを将来どのように解釈してもらいたいのかを考えて明細書を書くこと

が重要です。

Phillips判決は、米国特許のクレーム解釈を理解するための基本判例の一つです。