生成AIのセキュリティについて、
「入力した情報をAIの学習に使わないので安全です」
という説明を目にすることがあります。
これは重要な条件ですが、「学習に使わない」ことと「データを保存しない」ことは同じではありません。
「学習に使わない」とは
生成AIサービスでは、利用者が入力した文章やファイル、AIが生成した回答を、将来のAIモデルの改善や学習に利用する場合があります。
「学習に使わない」とは、こうした入力・出力をAIモデルの訓練や改善のために利用しないという意味です。
しかし、学習に使わなくても、サービス運用、セキュリティ、不正利用の監視などの目的で、入力内容や出力内容が一定期間保存される場合があります。
例えばOpenAIのAPIでも、顧客データは原則としてモデル学習に使われませんが、標準設定では不正利用監視のためのログが一定期間保持される場合があります。
ZDRは「保存しない」という考え方
これに対してZDR(Zero Data Retention)は、前の記事で説明したように、入力内容や生成結果などの顧客データを、処理後に原則として保持しない仕組みです。
つまり、
学習不使用=AIを育てるために使わない
ZDR=処理が終わった後にデータを残さない
という違いがあります。
両者は似ているようで、管理しているリスクが違います。
なぜ知財業務では違いが重要なのか
例えば、未公開発明の明細書を生成AIへ入力したとします。
そのデータがAIの学習に使われなかったとしても、サービス提供者側に30日間保存されているのであれば、その期間はデータが存在しています。
知財業務では、
「学習に使われるか」
だけでなく、
「保存されるか」「保存されるなら何日か」「誰がアクセスできるか」
まで確認する必要があります。
ZDRでもすべてが消えるとは限らない
さらに注意したいのは、ZDRという名称が付いていても、すべてのデータが完全にゼロになるとは限らないことです。
機能によっては保存が必要な場合があり、アカウント情報、課金情報、利用統計などのシステムデータが別に管理されることもあります。OpenAIやGoogle Cloudの公式資料でも、ZDRの対象範囲や例外が機能ごとに定められています。
確認すべきは言葉ではなく中身
生成AIを知財業務で使う場合、
「学習しません」
という説明だけで安全性を判断するのは十分ではありません。
学習への利用、データ保存期間、アクセス権限、ZDRの対象範囲をそれぞれ分けて確認すること。
これが、未公開発明や顧客の機密情報を扱う場合の基本になります。