米国特許侵害訴訟では、クレームの言葉をどのように解釈するかが、侵害の結論を大きく左右します。

では、そのクレームの意味を決めるのは、裁判官でしょうか、それとも陪審でしょうか。

この問題について重要な判断を示したのが、1996年の米国最高裁判決 Markman v. Westview Instruments, Inc. です。

何が争われたのか?

Markmanの特許では、「inventory」というクレーム用語の意味が争われました。

陪審は侵害を認めましたが、地方裁判所は異なるクレーム解釈を行い、非侵害と判断しました。

そこで、クレームの意味を決めるのは裁判官なのか、それとも陪審なのかが最高裁まで争われました。

最高裁は「裁判官が決める」とした

最高裁は、

特許クレームの解釈は裁判所が行う法律問題である

と判断しました。専門用語の意味について証拠が提出される場合でも、最終的なクレーム解釈は裁判官が行います。

一方、その解釈を前提として、被告製品がクレームの要件を満たしているかという侵害の事実判断は、陪審が担当する場合があります。

なぜ裁判官なのか?

最高裁は、歴史的な裁判制度を検討するとともに、裁判官の方が文書を統一的に解釈するのに適していることを理由の一つとしました。

同じ特許について、陪審ごとにクレームの意味が変わると、権利範囲が不安定になります。

同じ特許はできるだけ同じ意味に解釈されるべきである

という考え方も、裁判官にクレーム解釈を委ねる重要な理由になりました。

Markman Hearingとは?

現在の米国特許訴訟では、侵害判断に先立って、争いのあるクレーム用語について裁判官が解釈を決める手続が行われることがあります。

これが一般に Markman Hearing(マークマン・ヒアリング) と呼ばれています。

クレーム解釈によって、その後の侵害訴訟の方向が大きく変わることもあります。

明細書を書く段階から関係する

Markmanは訴訟の判例ですが、出願実務とも無関係ではありません。

将来、クレームの意味について争いが生じれば、裁判官はクレームだけでなく、明細書や審査経過なども踏まえて解釈します。

したがって米国出願では、

将来どのようにクレームを解釈してもらいたいかを意識して、クレームと明細書を作成すること

が重要です。

Markman判決と前回紹介したPhillips判決は、米国のクレーム解釈を理解するうえで、セットで押さえておきたい重要判例です。