米国特許のOffice Actionに対応するとき、拒絶を解消するためにクレームを狭く補正することがあります。

しかし、その補正は特許を成立させるだけでなく、将来の侵害訴訟における権利範囲にも影響する可能性があります。

この問題について重要な判断を示したのが、2002年の米国最高裁判決 Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co. です。

均等論とは?

特許侵害は、被告製品がクレームの文言を文字どおり満たす場合だけに成立するとは限りません。

文言上は少し違っていても、実質的には同じ働きをする場合には、Doctrine of Equivalents(均等論)によって侵害と判断されることがあります。

均等論は、わずかな変更によって簡単に特許侵害を回避されることを防ぐための考え方です。

しかし、補正した範囲を後から取り戻せるのか?

例えば、出願時には広いクレームだったものを、審査官の拒絶に対応するために狭く補正したとします。

その後の侵害訴訟で、

「クレームには文字どおり入らないが、均等だから侵害だ」

と主張して、補正前の広い範囲を取り戻すことができるのでしょうか。

ここで問題になるのが Prosecution History Estoppel(審査経過禁反言) です。

Festo判決は「完全に失う」とはしなかった

Federal Circuitは一時、特許性に関係する補正を行えば、その補正した要素について均等論を主張できなくなるという厳しいルールを採用しました。

しかし最高裁は、そのような完全な禁止までは必要ないと判断しました。

特許を得るためにクレームを狭く補正すると、原則としてその間の範囲を放棄したものと推定されます。

ただし、例えば問題となる均等物が補正時に予見できなかった場合や、補正理由とその均等物との関係がごく周辺的な場合などには、その推定を覆せる可能性があります。

OA対応時の補正理由が重要になる

Festoから分かるのは、補正後のクレーム文言だけを見ればよいわけではないということです。

なぜその補正をしたのか、何を放棄したのか

という審査経過が、後の権利行使で重要になります。

したがって米国OA対応では、

「拒絶が解消できるから、とりあえず狭く補正する」

だけではなく、その補正が将来の均等論にどのような影響を与えるかまで考えることが重要です。

Festo判決は、米国特許では権利化のための補正と、権利化後の権利範囲がつながっていることを示す重要な判例です。