米国でソフトウェアやAI関連発明の特許を考えるとき、避けて通れない判例の一つが、2014年の最高裁判決 Alice Corp. v. CLS Bank International です。
この判決は、35 U.S.C. §101の「特許適格性」を判断するための重要な枠組みを示しました。
どのような発明だったのか?
Aliceの特許は、金融取引で一方だけが支払いを履行するリスクを減らすため、第三者を仲介させる仕組みに関するものでした。
その仕組みをコンピュータで実行することがクレームされていました。
最高裁は、この「仲介決済」という考え方自体はAbstract Idea(抽象的アイデア)であると判断しました。
コンピュータを使えば特許になるわけではない
Alice判決で特に重要なのは、
抽象的なアイデアを「コンピュータで実行する」としただけでは、特許適格性は得られない
とした点です。
汎用コンピュータを使うというだけでは、抽象的アイデアを特許可能な発明へ変えるには不十分だと判断されました。
Alice/Mayoの二段階テスト
現在、§101の判断では、Aliceとその前のMayo判決を基礎とする二段階の考え方が使われています。
まず、
クレームが抽象的アイデア、自然法則、自然現象などを対象としているか
を判断します。
該当する場合には次に、
それ以外の要素を含め、クレーム全体として「significantly more(それを超えるもの)」があるか
を検討します。
この後半は、「inventive concept」があるかを探す段階とも説明されています。
ソフトウェアが特許にならないという意味ではない
Alice判決は、ソフトウェアそのものを特許対象から除外した判決ではありません。
重要なのは、単に抽象的な考え方をコンピュータ化しただけなのか、それともコンピュータやその他の技術を具体的に改善する発明になっているのかという点です。
USPTOの現在の審査でも、司法上の例外を「practical application(実際的な応用)」に統合しているかという観点などが検討されています。
AI関連発明でも重要になる
AIを利用する発明でも、
「AIを使って判断する」
「AIで情報を分析する」
という程度のクレームでは、§101が問題になる可能性があります。
そのため米国出願では、AIを使うこと自体ではなく、具体的にどのような技術的処理を行い、従来技術をどのように改善するのかを明確にすることが重要です。
Alice判決は、米国のソフトウェア・AI関連発明のクレームを考えるうえで、現在も重要な出発点となっています。