未公開発明や顧客の技術情報を生成AIで扱う場合、AI提供会社とのNDA(Non-Disclosure Agreement:秘密保持契約)は重要な対策です。
では、NDAが締結されていれば、機密情報を安心して入力できるのでしょうか。
ここで注意したいのは、「秘密保持義務があること」と「情報が漏れないこと」は同じではないという点です。
NDAは「漏らしてはいけない」という約束
NDAを締結すると、AI提供会社には、受け取った機密情報を第三者へ開示しない、目的外で使用しない、といった契約上の義務が生じます。
これは重要な保護です。
しかしNDAは、情報漏えいそのものを技術的に防止する仕組みではありません。
NDAがあっても事故は起こり得る
AI提供会社が秘密保持義務を守る方針で運営していても、
- サイバー攻撃
- システムや設定の不具合
- アクセス権限の設定ミス
- 従業員や委託先による内部不正
- 人為的な誤操作
などによって、情報が意図せず外部へ漏れる可能性を完全にゼロにすることはできません。
その場合、NDA違反として責任を問える可能性があったとしても、一度外部へ出た機密情報を「なかったこと」にすることはできません。
特に未公開発明や営業秘密を扱う知財業務では、この点が重要です。
NDAとZDRは考え方が違う
ここで、前に紹介したZDR(Zero Data Retention)との違いが分かります。
NDAは「情報を漏らさない」という契約上の対策です。
これに対してZDRは、入力したデータを処理後に原則として保存しないことで、そもそも漏えいの対象となるデータを残さないという考え方です。
つまり、
NDA=漏らさない約束
ZDR=残さない仕組み
という違いがあります。
契約と技術の両方を見る
もちろん、ZDRであってもリスクが完全にゼロになるわけではありません。
重要なのは、一つの対策だけで安全と判断しないことです。
知財業務で生成AIを利用する場合には、
NDAなどの契約上の保護に加えて、ZDR、アクセス管理、暗号化、保存期間などの技術的・運用上の対策も確認する。
このように、契約と技術の両面からリスクを減らしていくことが重要です。